事前に知っておきたい。第一種奨学金、申込と利用のポイント8

この記事では、最も利用率の高い”独立行政法人日本学生支援機構”の奨学金について説明しており、採用の条件ともいうべき年収基準やエントリー時期、給付額や返還方法などについて注目していきます。

高校二年生のお子様がいらっしゃるご家庭は、ぜひ読んでおいてください。

奨学金の検討で、優先ランクNo.1の”給付型奨学金”の選考基準からみて、検討が現実的ではなかったご家庭。

次に検討しておきたい奨学金種別は”第一種奨学金”ですよね。

この第一種奨学金は、無利子の貸与型(借りるタイプ)である事をおさえつつ、各事項に注目していきましょう。

注目1:奨学金の予約採用は”とりあえず”検討しておく

申し込みスケジュールをチェックしておきましょう

第一種奨学金の申し込みに関して、学生の進路や志望校などが、全く不透明な状態でも申し込めます。

申込資格として挙げられている事項は

  1. ◯年3月に、高等学校等(本科)を卒業予定の人
  2. 高等学校等(本科)を卒業後2年以内の人

その、①か②のいずれかの人、それだけです。

ですので、採用されるかは別としても、申し込み時期に一般的な高校3年生の方は、ほぼ全員申し込めるのですね。

注目2:最初の申し込み受付けは”学生が高校3年生の春~夏”

申し込みの時期は、春から夏です

第一種奨学金の申し込み受付期間は、通常2カ月ほどしかなく、高校生のうちにエントリーできるのは、この時期です。

予約採用では、申し込み時までの成績基準がありますので、ここでエントリーできれば、高校1~2年生時の成績が考慮されることとなります。

学年が上がるにつれ、授業の内容も難しくなることが通常ですから、好成績を維持しやすい1~2年の学力を提示できることは、メリットといえそうですね。

逆に、ここで残念ながら成績基準を満たしていなかったケース。

何とか卒業までの成績を向上できれば、進学時、在学採用時にアタックできるかもしれませんね。

注目3:第一種奨学金に”採用”されるには基準がある

申し込みについて、あまり細かい制限はないのですが、採用されるかどうかには明確な”選考基準”があります。

1.収入基準

収入・所得の上限額の目安

世帯人数給与所得者給与所得者以外
3人657万円286万円
4人747万円349万円
5人922万円514万円
出典:JASSO 選考基準

給付型奨学金から見ると、収入面での間口は広くなっておりますね。

あとは成績基準がどうか。というところです。

2.成績基準

第一種奨学金の成績基準には、学習意欲を有すると認められれば良い、という項目はないのですね。

a)予約採用(高校在学中に申し込み)

申し込み時までの成績(高校等入学から)が、5段階評価で全科目平均3.5以上

b)在学採用(進学後に申し込み)

申し込み時から2年間(高校2~3年)の成績が、5段階評価で全科目平均3.5以上(大学)3.2以上(専門学校)

前述しましたが、やはりここでは、予約採用でのエントリーが有利となるケースが多いのではないでしょうか。

注目4:採用で、貸与を受けられる金額

学生が借りられる金額を確認しましょう

表の金額から、月の貸与額を選べます。(給付型と併用の場合は金額制限あり)

大学

区分自宅通学自宅外通学
国公立20,000、30,000、45,00020,000、30,000、40,000、51,000
私立20,000、30,000、40,000、54,00020,000、30,000、40,000、50,000、64,000
出典:JASSOホームページ 入学者の貸与月額

短期大学・専門学校

区分自宅通学自宅外通学
国公立20,000、30,000、45,00020,000、30,000、40,000、51,000
私立20,000、30,000、45,000、53,00020,000、30,000、40,000、50,000、60,000
出典:JASSOホームページ 入学者の貸与月額

選べるということは

  • 少なめに借りて、トータルの借入額を抑える
  • 満額借りて、他も合わせた借入額のうちの無利子分を大きくとる

ご家庭によって、そのような調整ができますね。

注目5:給付型や第二種奨学金と併用できる

1.給付型との併用

a)申し込み

給付型と第一種は、申し込み時期や、どちらを先に申し込むかなどの制限はなく、それぞれ別個のものとして考えることとなります。

b)第一種の貸与金額

注目4でご紹介した金額が、以下の表の金額に制限されます。

大学(昼間部)出典:JASSO HP 貸与月額
区分第Ⅰ区分第Ⅱ区分第Ⅲ区分
国公立自宅通学0020,300円
自宅外通学0013,800円
私立自宅通学0021,700円
自宅外通学0019,200円
短期大学(昼間部)出典:JASSO HP 貸与月額
区分第Ⅰ区分第Ⅱ区分第Ⅲ区分
国公立自宅通学03,80024,300
自宅外通学0017,800
私立自宅通学0022,900
自宅外通学0017,400
専門学校(昼間部)出典:JASSO HP 貸与月額
区分第Ⅰ区分第Ⅱ区分第Ⅲ区分
国公立自宅通学1,90016,200

20,000、30,500

自宅外通学0024,000
私立自宅通学0023,800
自宅外通学0018,300

表から分かるとおり、併用できる方は、給付型奨学金の収入基準”第Ⅲ区分”に該当の方に絞られてくるイメージです。

2.第二種と併用

a)申し込み

“併用貸与”コースに申し込みます。

ですので、併用貸与コースが採用になるかどうか、ということになります。

つまり「第一種が採用になったけど、それでは金額が足りないので追加で第二種を申込もう」というような概念ではないのです。

このケースだと、次の時期に併用貸与を申し込むか、第二種に切り替えるかということも検討することとなるのですね。

b)第一種の金額

第一種を最高月額で申し込みする必要があります。

イメージとしましては、

「第一種を最高月額まで借り入れても不足する場合は、第二種も一緒に借りられますよ」

ということになります。

通常ですと、借り入れ分のうち、無利子分(第一種)を多く取ろうとすることは自然なことですが、念のため留意されたほうが良いかもしれませんね。

注目6:奨学金の返還方式で”所得連動返還方式”を選択できる

返還方法の一つ、所得連動返還方式をチェックしておきましょう

JASSOの貸与型奨学金のうち、返還方法の”所得連動返還方式”を選択できるのは第一種のみです。

昨今の社会情勢を見ても、収入が不安定になるリスクがあるご家庭は少なくないのではないでしょうか。

そんななか、収入の増減によって返還額も併せて増減してくれる”所得連動返還方式”を選択しておけば、無理のない返還を続けられそうですね。

注意しなくてはいけない点として、所得連動返還方式を選択するためには、保証を”人的保証”ではなく“機関保証”を選択する必要があるという点です。

検討の際には、機関保証のメリットやデメリットも、併せて確認しておくとよいでしょう。

注目7:在学中でも利用することができる

進学後も、要件を満たすようになれば、申込めます

在学中に、第一種の採用基準を満たすこととなれば、申し込みや切り替えを検討することができます。

注意点としては、採用基準を満たしていたとしても、第一種が採用になるまでは、現在のコースを辞退しないことです。

不採用となったときに、今まで利用できていたものすら、受け取れなくなってしまいます。

注目8:貸与が終了した月の7カ月目から返済が始まる

返還が始める時期もチェックしておきましょう

これは、めでたく卒業した場合も、中退してしまった場合も同じです。

卒業の場合ですと、ある程度大学側のバックアップも受けながら就職活動を行うことが想定されます。

返還開始まで7カ月あれば、なんとか希望の就職先を見つけることができそうですね。

中退してしまった場合は、もしそれが無計画なものであれば、大変不安定な暮らしの状況で返還開始が迫ってくることになります。

返還が滞ると、今後ブラックリストに載ってしまうなんてことも出てくるかもしれません。

そうならないためにも、貸与額の借りすぎに注意し、計画的な学生生活を送ることが重要ですね。

まとめ
  • 注目1:奨学金の予約採用は”とりあえず”検討しておく
  • 注目2:最初の申し込み受付けは”学生が高校3年生の春”
  • 注目3:第一種奨学金に”採用”されるには基準がある
  • 注目4:採用で、貸与を受けられる金額を確認
  • 注目5:給付型や第二種奨学金と併用できる
  • 注目6:奨学金の返還方式で”所得連動返還方式”を選択できる
  • 注目7:在学中でも利用することができる
  • 注目8:貸与が終了した月の7カ月目から返済が始まる

奨学金制度は大変ありがたい制度ではあります。

しかし、安易な利用や、計画性のない借り入れなどで、さまざまな問題にもつながっております。

当事務所はそういった制度と、皆さまが上手に付き合っていける、そんなお手伝いもさせていただいております。

ご家庭それぞれの“個別診断”もたまわっておりますので、お気軽にご相談下さいね。

ご要望などのコメントがあれば、お気軽にお寄せください☆