親しい人とのお金の貸し借り、金銭消費貸借契約書等で大切な人を守りましょう

大切な人との大切な思い出。そのどこを切り取っても、かけがえのない光景が目に浮かんでくると思います。

ですが、大切な人だからこそ起こり得る、お金の貸し借りの相談。

きっと相談相手として、真っ先に浮かんだ人があなただったのでしょう。

何とかしてあげたいと、心の底から思う反面、注意点もあるでしょう。

実際にお金を貸すこととなれば

・返済がなされなかったら・・・
・大切な関係に、影響があったら・・・

など、さまざまなリスクが思い浮かびます。

ここではまず、親族や友人といった、個人間でのお金の貸し借りに潜むリスクを見ていきます。

最大のリスクは”お金が返ってこない”ではなかった

お金が返ってこない事よりも、怖いリスクが潜んでいる。

こんな話を聞いたことはございませんか?

まだ小さいころ、夏祭りやお正月ともなれば、泊りがけで遊び来ていた甥っ子や姪っ子。
家は少し古く、狭かったけど、一緒にお風呂に入り、夜遅くまで、ハシャいで遊んだ。
甥っ子のほうは、性格がキカなく、ちょっとニガテだったが、すっごく楽しかった思い出。
でも、大人になった今、甥っ子姪っ子が、どこでどう暮らしているのかも知らない。
母親に以前聞いてみたが、その家庭とは「縁を切った」らしい。
お金のことで、親兄弟同士がモメたの原因だとか。
誰が悪いわけでも、ないのかもしれない。
ただ、多くの親族の関係が絶たれてしまった。
そして、あまりに多くの時間が流れてしまった。

これは、私がまだ小さい時の体験談です。

そうです。最大のリスクは、お金が返済されないことによる、実質の親族関係や友人関係の崩壊といえます。

よく聞かれるような話かもしれませんが、よくある話であってはいけません。

なぜこのようなことになってしまうのか。

考えられる原因や注意点を見ていきます。

原因1:口約束でお金を貸した

相手方が親族や友人など、比較的親しい人ですので、口約束(口頭契約)になってしまいがちです。

書面により・・・となると、少し堅苦しい感じがするのも無理はありません。

ですが、借り主が「借りた覚えはない」となった場合、貸し主は貸したことを自ら立証しなければならない注意点があります。

立証が認められなければ、お金は返済されない可能性すらあるのですね。

対策1:重要事項は、書面で残しておく

金銭消費貸借契約は、口頭でも成立します。

ですが後々、当事者間で”言った言わない”の論争とならないとも限りません。

ですので、以下のような重要事項は、書面で残しておくことが望ましいです。

  • 当事者の住所氏名
  • 貸し付けた日付・金額
  • 弁済期限

これに、相手方から署名・捺印がもらえれば、十分証拠になります。

原因2:貸し主の良心が、借り主を不安定な状況に

返済方法が分からない、期限が分からない。

親族や友人など個人間でのお金の貸し借りの場合は、特に、貸し主の良心が存分に表れやすいものです。

例えば

「返済は、余裕ができてからで良いから」

貸し主からこのような言葉をかけられたら、借り主としては、非常にありがたい気持ちだと思います。

ですが、この場合を逆の視点で見てみると、以下のような注意点があることがいえます。

  • 返済期限が不明確
  • 返済方法が不明確
  • 返済できなかった場合の想定がない

などです。

これは借り主からすると、“完済というゴールに、どうやって、どのくらいづつ向かってよいか分からない”ことになります。

これは、借り主自身も気づいていないケースがほとんどでしょう。

時が経つにつれ、お互いの解釈に”ズレ”が生じてしまいそうですね。

場面ごとの例を見てみましょう。

当事務所の応接スペース

場面1)貸し主の思い立ったタイミングで返済を求めた

考えられる事案

a)貸し主は、何度か思いとどまったうえで、返済を求めている

一般の方にとって、返済を求めるという行為は、その道のプロではありませんから、相当にストレスを伴うものといってよいでしょう。

いや、もう少し待ってみよう“と、何度か思いとどまったうえでの求めであるとしても、不思議ではありません。

そういった返済の求めを断られてしまうと、貸し主としては、今後に対する不安が大きくなってしまうかもしれませんね。

b)借り主は気を悪くしている

返済のタイミングは”余裕ができてから”つまり、借り主の判断で良いと取れますので、返済を求められること自体が想定外であっても不思議ではありません。

場面2)借り主は、まとまったお金ができたので一部返済したい

考えられる事案

a)貸し主は”一部返済”を嫌っている

貸付額の残額などの管理は、通常は貸し主が行なうことが想定されます。

借り主の都合の良い操作などを防ぐためです。

借り主の任意の金額、タイミングでの一部返済を認めてしまうと、貸し主の残額の管理は複雑になってしまうでしょう。

さらに、数ある返済のうち、貸し主が把握していなかった返済が一度でもあれば、紛争発生の機会を作ってしまうことにもなりかねませんね。

b)”一部返済したい”それは親族の意見を聞いてのことだった

お金の貸し借りには、実質の貸し主、借り主(当事者)以外に、その当事者の親族が、間接的に影響を与えるケースも少なくありません。

貸し借りしているお金自体が、その親族に大きくかかわっているケースもありますので、親族の意見はないがしろにもできませんが、あまり過度な干渉とならないよう、注意が必要といえますね。

対策2:契約書にはお互いに”心をこめた”ゴールへの道を盛り込む

民法では”契約自由の原則”がありますので、それぞれがどんな契約を交わしても良いことになっています。

通常の、企業と個人や企業同士の場合では、お金の貸し主が契約書などを準備することがほとんどですので、貸し主に不利益が被らないような内容になっていると思われます。

例として以下の条項が挙げられます。

  • 利息、遅延損害金
  • 弁済期限
  • 期限の利益喪失
  • 連帯保証人

これが、比較的近い間柄での契約となると、自分の身を守るためだけの契約とは、また違った意味を持ってくることになります。

  • 無利息にして、遅延の時はどうするか
  • 返済期限はいつにするか
  • 返済方法はどうするか
  • 連帯保証人ではなく”保証人”ではどうか

など、お互いの事情を考慮した、世界で一つだけの契約を結ぶことができるのです。

まとめ

口約束での、今後お互いがどうしていくか全く不透明な契約。

それは、お互いの信頼関係に亀裂を生じさせる、そんな大きなリスクが潜んでいると、言わざるを得ません。

ですが、お互いに納得できる、きめ細やかな取り決めを、契約書に盛り込むことができれば、それは、ゴールへの道や進むペース、期限などが明確になります。

そして、ゴール(完済)することによって、お互いの信頼関係が守られることを意味します。

いいえ、信頼関係は、以前よりも強くなることすらあります。

返済の方法、期限が分かり、ゴールが見える。

少し大げさに思えるかもしれませんが、個人間の貸し借りの場合、相手方は”大切な人”である場合が少なくありません。

大切であるがゆえですが、貸し主の良心が、逆に借り主を不安定な状況に置くことになってしまうケースも確認してきました。

当事務所では、当事者間の取り決めである”契約” 大切な人の想いに添ったものを、ひとつひとつ契約に盛り込んでいく。そんな金銭消費貸借契約書を作成いたします。

“返済がなされない”その、さらに向こう側に潜むリスクに目を向けていきましょう。

質問:何かお悩みがありますか?あれば、コメントにてぜひ教えてください。

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※当事務所の作成する”金銭消費貸借契約書”は2020年4月施行の民法改正に対応しております。