ここでは、遺言方法の種類や、特筆すべき“付言事項”についてふれてみたいと思います。
私も、遺言を作成した際は、悩みながら付言事項を書きました。
涙無くして書くことはできませんでしたので、最終的には、眼鏡と顔の間にハンカチを挟んで書き上げたものです。
さて現在、さまざまなメディアで取り上げられている”終活”や”エンディングノート”。
世間では、そういった”死”との向き合い方が注目されています。
確かに、葬儀一つをとっても、従前のように何百人もが参列するような、比較的大規模な葬儀は減少しているといえそうです。
新聞の訃報欄に目を通す際も、既に「葬儀終了」の文言が掲載され、近親者のみで、しめやかに執り行われたことが想像されます。
更に、墓じまいに合祀墓、永代供養などが注目されていますよね。
その共通する想いとして挙げられるのが
残された親族へ、迷惑をかけたくない
そんな想いからではないでしょうか。
そして、一歩間違うと、親族関係が一度に崩れ去ってしまう事もある「遺産相続」
この、相続における遺族間の紛争対策としても、非常に有効な手段
それが”遺言”です。
紛争対策としてだけではなく、自身が、目の黒いうちにした意思表示を、遺族に汲んでもらうという意味合いもあわせ持ちます。
終活に取り組んでおられる方であれば、しっかり準備しておきたい遺言。
遺言に想いを託し、後世円満の一助としましょう。
遺言
遺言については、民法に規定されております。
以下が参考条文です。
(遺言の方式)
第960条 遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。
(遺言能力)
第961条 15歳に達したものは、遺言をすることができる。
第963条 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。
先述した「目の黒いうちに」はこのことからです
(普通方式による遺言の種類)
第967条 遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない。ただし、特別の方式によることを許す場合は、この限りでない。
上記のように、一般的な遺言は、三つの方法によりすることができるのですね。
そして遺言は、財産の行き先や配分を指定するだけでなく、遺族への想いや、弔い方の希望などを
“付言事項”にしたためることができます。
付言事項について、特に民法には規定されておりませんが、遺言に至った想いや、今までの感謝などを遺族に伝えてあげることができます。
例えば
- 家族みんなで過ごした時間、とても幸せでした。今まで本当にどうもありがとう。
- 子供たちに余計な心配をさせたくないので、この遺言を書きました。葬儀は○○堂に頼んでほしいですが、あまりお金をかけずにね。
- 子供たちが本当に立派になって、本当にうれしく思います。老後は、お父さんと二人きりの時間をたくさん過ごせて、本当に幸せでした。
- 自宅は○○に残します。これからも安心して住んでください。それ以外の財産は子供たち二人で均等に分けました。大切に使ってください。子供たちが立派に育って、私は誇らしい気持ちでいっぱいです。
など。
この付言事項には、法的効力や、付する法的義務はないものの、遺族への想いや遺言への理解を促すなど、大変素晴らしい効果があります。
そして何よりも付言事項には、遺言書に書いてきた
- 建物を○○に相続させる
- 預金は全て、遺言執行者に換価させ、三分の一づつ均等に○○、△△及び□□に相続させる
などの、法的効果を発生させる無機質な条項。
それらのひとつひとつに、言わば”息を吹き込む”重要なメッセージとなります。
恐らく、例のようなアッサリとした内容では、終われないことが多いでしょう。私のように、涙覚悟で、心して挑んでください(笑)
そうです。
遺言の作成により、今一度、親族間の関係なども見つめ直す、良いきっかけともなるのです。
素晴らしいことです。
それぞれの方法やメリット・デメリットについては、他で取り上げるとして、遺言をする際に留意したい事項を挙げてみます。
1.遺留分の存在
遺留分とは、相続人の、遺言によっても排除されない、一定限度までの金銭等の支給を受ける権利を有する部分です。
遺言の際は、相続人の遺留分を侵害しないような考慮が望ましいといえます。
2.配偶者居住権・短期居住権の新設
これは民法の改正により、新たに規定され認められました。
これまでは、居住建物を不動産として相続させた場合、相続を受ける方の相続分のうち、不動産の割合が大きくなり、今後の必要生活資金など、流動性財産を確保できる枠が小さくなる場合がありました。
そこで、改正により、被相続人の配偶者にのみ、居住する権利部分だけを相続させることが可能になったのです。
以上のことも踏まえつつ、次の記事で作成方法などをご紹介していきますね。
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