高圧ガスの第二種製造届 作成の参考と注意事項(北海道)

高圧ガスに係る周辺法規則などの解釈は、かなり難解といえます。

行おうとする事業規模や、取り扱う高圧ガスの種別、更にどのような処理をするのかなどによって、届出に提示しなければならない情報が、全く異なります。

ここでは、高圧ガス第二種製造届取得に向けた参考状況を記載しておきます。

高圧ガスは、その性質上、毒性や爆発性が容易に想定されるため、届出にあっては、高圧ガスの取り扱いや設備などに厳格な基準が設けられているのです。

届出以後の事業運営にあたり

  • 施設と設備に関する技術上の基準
  • 高圧ガス取り扱いに関する技術上の基準

これらに準じて事業運営がなされることを示すことができる。

事業開始の届出にあっては、以上のことを踏まえる必要があるといえそうです。

以前私は、相談者様から一旦大まかな相談内容をお聞きしたうえ

  • 高圧ガス保安法
  • 一般高圧ガス保安規則
  • 冷凍保安規則
  • フロン類排出抑制法

などの周辺法規則に目を通したのですが、聞きなれない設備名や単位、計算式などが頻出し頭の中は「大規模なガス工場施設」を連想。

後日、さらに相談内容を法関連資料なども広げ、踏み込んでお話していると、相談者様は次のようにお話され、私は”とてもお役に立てなさそうだ”と感じていたことを撤回しました。

「この法条文を見ていると、ものすごく大きな施設で、朝から晩まで煙突から煙が出ているようなものを想像してしまいますが、こちらが検討している事業は、移動も容易で、各機器をつなぎ合わせるだけのこじんまりとしたものです。」

今回の案件は、事業運営で想定される、某種の純度のガスを、某種ガスに”充てん”する行為の結果、処理の前と後で、純度や混合比率が異なった”新たなガス”が生成されることとなり、その処理の結果が法規則でいう”製造”にあたるというもの。

逆に解釈すると、業者が普段何気なく行っていることや使用する機器によっては、製造等とみなされ許可や届出が必要ということも出てくることが考えられます。

高圧ガス第一種製造許可

こちらは高圧ガス保安法第5条一項の一号及び二号ですが、

一 圧縮、液化その他の方法で処理することができるガスの容積が一日百立方メートル以上である設備を使用して高圧ガスの製造(容器に充てんすることを含む。以下同じ。)をしようとする者

二 冷凍のためガスを圧縮し、又は液化して高圧ガスの製造をする設備でその一日の冷凍能力が二十トン以上のもの使用して高圧ガスの製造をしようとする者

出典:e-Govより一部抜粋

この通り、一日の処理能力が多大である設備による製造を指します。

比較的大規模な施設ですので、設備施設の、認定検査機関等による完成検査や定期検査などがあります。

高圧ガス第二種製造届

今回はこのような大規模な設備施設ではありませんし、冷凍のためのガス処理でもありません(第五条2項二号)から、第五条第2項の”製造をする高圧ガスの種類、製造のための施設の位置、構造及び設備並びに製造の方法を記載した書面を添えて、その旨を都道府県知事に届け出”なければならないことになります。

第一種製造の”許可”とは違い、第二種製造の届出ですので、受理されれば結了です。

ここで、高圧ガスの種別が法的に区別されおり、区別によって以下の規則の適用を受けます

  • 一般高圧ガス保安規則
  • 液化石油ガス保安規則
  • 冷凍保安規則

冷凍でも、液化石油ガスでもなければ、一般高圧ガス規則(以下:一般則という)に従うこととなります。

“高圧ガス保安法第五条第二項“の届出(第二種製造届)方法について、一般則第四条に詳細が記述されております。

(第二種製造者に係る製造の事業の届出)

第四条 法第五条第二項の規定により届出をしようとする者は、様式第二の高圧ガス製造事業届書に製造施設等明細書を添えて、事業所の所在地を管轄する都道府県知事に提出しなければならない。

2 前項の製造施設等明細書には、次の各号に掲げる事項を記載しなければならない。

一 製造の目的
二 処理設備の処理能力
三 処理設備の性能
四 法第十二条第一項の経済産業省令で定める技術上の基準及び同条第二項の経済産業省令で定める  技術上の基準に関する事項
五 移設等に係る高圧ガス設備にあつては、当該高圧ガス設備の使用の経歴及び保管状態の記録

出典:e-Gov

届出について、一般的な施行規則についてはここまでになります。

以降詳細は、届出ようとする都道府県の条例により異なるでしょう。

届出の方法についてですが、北海道では、うえの”第二号様式”は容易に見つけることができるのですが、“製造施設等明細書”が北海道内に限らず、全国ネットで探してもなかなか出てきません。

この “製造施設等明細書” なるものは一体どのような物なのかを、直接振興局に確認してみると

以下、振興局回答

「製造施設等明細書」となる様式は「製造計画書」及び「技術上の基準に関する事項」でございます。

とのこと。

実は北海道では、”製造計画書”という書類と”技術上の基準に関する事項”という書類を合わせて”製造施設等明細書”としているのです。

製造施設等明細書という名目の書式を探したところで、見つからないはずです。

第二種製造者の届出の検討

北海道の様式ですが、ここに置いておきます。

必要書類

※↑記載例も少し入っております
※各欄記入にあっては使用機器の仕様書、カタログ、製造元データ集などを参考

高圧ガスの処理方法やガス種別、設備機器などにより、該当する技術上の基準に対応していることを示します。

高圧ガス保安法第12条第1号は、事業施設や設備に関する技術上の基準。

高圧ガス保安法第12条第2項は、取り扱いに関する技術上の基準となります。

e-Gov法令検索:第6条以降が対応すべき基準の定め

記載の一例参考(定置式かつ処理能力三十立法メートル未満)
※事業の態様により、示すべき対応状況や注意事項がが多様に異なります。詳細については、担当行政庁に確認しましょう。

1.高圧ガス保安法第12条第1号に規定する技術上~
 一般則第6条第1項(高圧ガス製造のための施設~

条項技術上の基準対応状況
第6条第1項第一号事業所の境界線を明示し、かつ、当該事業所の外部から見やすいように警戒標を掲げること。掲げる
(掲げるものを記入)
第6条第1項第六号可燃性ガス又は特定不活性ガスの貯槽には、可燃性ガス又は特定不活性ガスの貯槽であることが容易に識別することができるような措置を講ずること。措置を講ずる
~~~~~~~~~
他府県の情報等を基に筆者作成

2.高圧ガス保安法第12条第2項に規定する技術上~
 一般則第12条第2項(処理能力三十立方メートル未満の第二種製造~

条項技術上の基準対応状況
第12条第2項第一号高圧ガスを容器に充填するときは、火気を取り扱う施設、多数の人の集合する場所又は引火性若しくは発火性の物をたい積した場所から五メートル以内でしないこと。五メートル以内でしない
第6条第2項第一号イ)安全弁又は逃し弁に付帯して設けた止め弁は、常に全開しておくこと。
ハ)次に掲げるガスは、圧縮しないこと。
ニ)二・五メガパスカルを超える圧力の圧縮アセチレンガスを製造するときは、き釈剤を添加してすること。
イ)常に全開にする
ハ)圧縮しない
ニ)該当なし
~~~~~~~~~
他府県の情報等を基に筆者作成

※以上の、1)、2)を以って”製造施設等明細書”という

添付書類

  1. 事業所全体平面図
    境界線と警戒標の設置位置及び保安距離を示した図面(計画上の物)
  2. 製造工程の概要を説明した書面及び図面 (計画上の物)
  3. フローシート又は配管図 (計画上の物)
    高圧ガス設備及びガス設備、弁類、配管、計装設備及び安全装置の設置位置、機器名称、機器番  号、流体名、常用温度・圧力等(温度・圧力等の区分を色分け等により明記)が記載されたものであること。
  4. 高圧ガス製造施設配置図 (計画上の物)
    防消火設備、ガス漏洩検知警報設備、障壁等の設置位置及び製造設備及び製造施設に係る設備間距離、火気取扱施設との離隔距離を示した図面
  5. 機器等一覧表 (計画上の物)
    塔・槽類・熱交換器類、圧縮機・ポンプ類、弁類及び配管類についての材料、設計圧力、設計温度、肉厚等を記載したリスト
  6. 処理・貯蔵能力の計算書
    高圧ガスの種類ごとに所定の計算方法により計算した処理・貯蔵能力の計算書
  7. ガス設備の気密な構造を確認する書類、高圧ガスの耐圧・気密性能試験成績書及び強度計算書に対応する事項(特定設備にあっては特定設備検査合格証、指定設備にあっては指定設備認定証、大臣認定品にあっては認定試験者試験等成績書)の写し

・上記①~⑦に掲げるもののほか、製造施設に応じて、法第12条第1項及び第2項の基準の確認に必要な書面又は図面

・法人登記簿謄本(個人の場合は住民票)

・届出手続きの権限を示す委任状(代表者以外の者が届出手続きを行う場合)

に、なります。

以上から、届出作成に用意すべきものは、以下のものが想定されます。

・関連する許認可取得で使用した控え
・使用を想定している機器の仕様書、データ集
・事業所の図面等

保安統括者等の選任が必要かどうか

法規則で選任対象除外となっている事業者以外は、設置しなくてはなりません。

対象除外とする、保安統括者を選任する必要のない第二種製造者とは

処理能力(不活性ガス又は空気については、その処理能力に三分の一を乗じて得た容積とする。)が百立方メートル未満の処理設備を設置する者(可燃性ガスの液化ガスを加圧するためのポンプを設置する者であつて処理能力が三十立方メートル以上百立方メートル未満の処理設備を設置する者を除く。)又は認定指定設備を設置する者とする。

出典:e-Gov

百立方メートルですから、小規模な事業の態様であれば、設置の必要対象外となり得ます。

さらに届が受理された後も、その後、届けに示さなかった事実や変更があれば、その都度届け出ることとが必要です。

最後に

当事務所が検討したこととしては以上です。

今回の案件は、相談で終了しましたが、インターネットでも情報量が少ない印象でしたので、ここに参考までに残しておきます。

何か解釈や方法について、誤りやアドバイスがあれば、今後の参考とさせていただきますので、下のコメントからお気軽にお声をいただければと思います。